アランのプロポから

組織の論理

軍隊といふ組織のもつ本質的な非論理性、非倫理性について、アラン(1868-1951)が書いたプロポを読んでみよう。(1921年5月14日) 戦争では、言はれること、書かれたことは、どれも本当ではない。私がまだ仕事に就いたばかりの時、遠くの隊長が電話で尋ねてき…

子供時代の意味

正月の番組で、宮崎駿、養老孟司両氏の対談「子どもが生き生きするために」といふのを放送してゐた。アラン(1868-1951)が1921年5月5日(こどもの日!)に書いたプロポを思ひだす。アランが語つてゐるのは、自然の中の人間ではなく、歴史の中の人間であるが。…

二種類の予言者

アラン(1868-1951)は、気分に任せれば人は悲観的になる、楽観的になるには意志が必要だ、と説いた(1923年9月29日のプロポ)。同じ趣旨の事を、1914年2月6日のプロポでは、予言者の二つの類型といふ形で述べてゐる。 人が既に知つてゐること、知りすぎてゐる…

宗教の効用

アラン(1868-1951)は、既存の宗教を信じてはゐなかつたが、その効用は認めてゐた。さうした考へが現れてゐる文章の一例。1914年1月31日のプロポ。 これは、白髪の友達から聞いた話で、彼女は田舎に引つ込んで、汚れた子供たちに教理問答書を習はせてゐた。こ…

自分に素直になる、といふこと

最近は余り聞かなくなつたが、「自分に素直に」といふ言葉が流行つたことがある。若い人達は、この言葉で、何を考へてゐたのか。アラン(1868-1951)が、1913年11月17日に書いたプロポを読んでみよう。 もし、蓄音器が、突然、諸君に罵詈雑言を浴びせ始めたら…

親しき仲にも礼儀あり

アラン(1868-1951)が1913年9月10日に書いたプロポを読んでみよう。 ブリュイエールだつたと思ふが、良い結婚といふものはあるが、甘く美(うるは)しい結婚などない、と言つた。私達人間は、これらの偽モラリスト達の沼から抜け出さねばならないだらう。彼ら…

言葉の魔力

アラン(1868-1951)が言葉の魔力について書いたプロポを読んでみよう。(1913年8月19日) 呪(まじな)ひは、言葉から来る。言葉には、仕草や顔の動きが伴ふのが常で、言葉の表現する力を増す。呪ひは表現することから来るのだ、とも言へよう。物につ…

平和を愛する心は戦争を防ぐか

アラン(1868-1951)が第一次世界大戦の前に書いたプロポを読んでみよう。(1912年11月8日) 大半の人々は、平和を愛する。恐れからといふよりも、秩序と平静を好むからだ。この好みが自然なものでなかつたとしたら、人間が動物や諸物に君臨することは…

原作を読むことの意味

今年はダーウィン(1809-1882)生誕200年だ。アラン(1868-1951)も、ダーウィンの熱心な読者だつたやうで、こんな文章を書いてゐる。(1912年5月15日付のプロポ) このところ、ダーウィンを読みながら、この豊かな哲学者の美しさに捉へられてゐた。こ…

共和国としての私

アラン(1868-1951)が、1910年12月4日付のプロポで、こんなことを書いてゐる。 何かの事故で少しばかり皮や肉を取られると、この私のかけらは、すぐに死んでしまふが、だからと言つて、このかけらが、分けることのできない生命の一部なのだと考へては…

プラトンの『国家』

アラン(1868-1951)が、1910年4月4日付のプロポで、プラトンの『国家』について書いてゐる。("Propos I" Biblioteque de Pleiade, p.72-73) プラトンは自己抑制について、素晴らしいことを言ひ、内面の統制は貴族的でなければならないことを示してゐる…

貧しさと説教

アラン(1868-1951)が、1909年11月13日付のプロポで、慈善家が極貧の人達に向つてするお説教が大嫌ひだと書いてゐる。貧しい人達は、目の前の出来事で精一杯なのだ。ある種の良い行ひは、既に強ひられてをり、その他の良い行ひは、不可能なのだ。 余…

進化論の年

2009年は、ダーウィン(1809-1882)生誕200周年、『種の起源』出版150周年に当たり、科学雑誌などでも特集が組まれてゐる。進化論といふのは、非常に強力な理論で、その適用範囲も幅広い。例へば、アラン(1868-1951)は、1908年9月1日付のプロ…