科学と哲学

カシミール効果

5月22日号の Economist 誌にカシミール効果の話が出てゐる。記事は、かう書き始められてゐる。 無から何かが生まれ得るか。哲学者達は何千年もこの問題を議論してきたが、物理学が答をもたらした。それは、然り、といふ答である。 カシミール効果とは、量子…

将来の予測はどこまで可能か

Mark Buchanan "NEXUS"を読み始めたら、冒頭に、Karl Popper の"The Poverty of Historicism"の話が出てきた。歴史の予測は不可能であるといふことを、次のやうな議論で示してゐるといふ。先づ、原子爆弾の例に見られるやうに、人間の知識の増加は歴史の流れ…

動きをどう捉へるか

ベルグソンを読むと、いろいろな考へが湧いてくる。彼が、問題を根本のところまで遡つて考へ直してゐるからだらう。例へば、次の一節。(Œuvres p.1257) S'agit-il du mouvement? L'intelligence n'en retient qu'une série de positions : un point d'abor…

構造の出現

高次の構造が生まれるためには、それまで存在しなかつた(あるいは弱かつた)関係が基礎として必要だ。交通の発達で分業が進むといふのは、その一つの例だ。生物の場合には、例へば、多細胞生物の細胞間での反応がそれだ。これがなければ多細胞生物は一体性…

問題の在り処

問題はどこにあるか。 台風の性質を調べようとする科学者は、何を見るか。木星や土星の位置か。 水素原子内の電子の動きか。水の分子の構造か。 何を見るにしても、適当な階層といふものがある。それは、見る対象の 性質によるので、一概に決められるもので…

Corals fail a test of neutrality

Corals fail a test of neutrality ("Nature" Vol440, 2 March 2006) ecologyのneutral theoryが予測するよりも珊瑚礁の多様性は大きい。 そもそもneutral theoryとは何か。ここ数十年で最もexcitingだとされる この理論は、たった二つの大前提から成り立つ…