Irena Sendler (1910-2008)

Economist 誌の Obituary は、いつも興味を持つて読んでゐる。今回は、Irena Sendler(旧姓 Krzyzanowska)だつた。

ポーランド女性で、ナチス占領下のワルシャワのゲットーからユダヤ人の子供約2500人を脱出させた。ドイツ人への感染をおそれたナチスから、チフス治療のためにゲットーへの立ち入りを許され、その出入りを利用して子供たちを助け出したのだ。その数は、有名なシンドラーに救はれた人達よりも多い。発見されれば、関係者は全て処刑されるといふ危険を冒しての活動だ。

有名にならなかつたのは、ロンドンに亡命していたポーランド政府からの支援を受けてゐたため、戦後、共産党政権から睨まれたからである。1983年に、初めて政府からエルサレムへの旅行を認められた。2003年に、ポーランド最高の栄誉である白鷲勲章を得てゐる。

同様の活動に従つてゐて、ナチスに殺された人達も多くゐたに違ひない。Sendler 女史も、処刑されさうになつたところを、賄賂で助けられたといふ。骨を折られるやうな拷問をされても、仲間の活動については口を割らなかつたことや、処刑を免れるとすぐに名前を変へて活動に戻つたことから、運だけではなく、意志も人並み外れて強かつた人だつたことが分かる。