Economist 誌の死亡記事

Economist 誌の死亡記事(Obituary)を、いつも興味深く読んでゐる。その人選は独特で、書きぶりも洒落てゐる。かうした記事のスタイルを作つたのは、Keith Colquhoun といふ人ださうだ(どう発音するのだらう?)。今年の7月15日号の同誌で、ご本人の死亡記事を読んで知つた。

 

かういふ記事が無ければ、決して知ることのなかつた人々の人生を読むと、いろいろと考へさせられる。例へば、7月22日号に載つたMau Piailug氏。星と風と海の様子を頼りに大洋を渡る術を心得てゐる最後のポリネシア人だ。

 

8月28日号は Bill Millin氏。ノルマンジー上陸作戦に参加したパイプ吹きである。パイプといふのはバグパイプで、日本で言へば突撃ラッパのやうなものだらうか。英国では、伝統的にバグパイプは武器として位置づけられてゐるのださうだ。バグパイプを吹きながら戦場の橋を渡る Millin 氏をドイツの狙撃兵は視界に捉へてゐたが、この「狂人」を憐れに思ひ撃たなかつたのだといふ。

 

広島と長崎で二度被爆した山口彊(やまぐちつとむ)氏については、日本の新聞で知つたのだが、Economist 誌の記事では、その人の姿がより明確に浮かび上がるやうに感じる。

 

様々な環境に適応して生きて行く人間の力に心を動かされるし、さうした人々を取上げる Economist 誌の底力を感じる。