CDの功罪

音楽ソフトのネットによる直接配信が進んでをり、CDの時代は終はらうとしてゐる。高音質のソフトが簡単に手に入るので、Timedomain スピーカー+アンプの良さが一般の人達にも広く知られるやうになるだらう。

 

1980年代に登場したCDは、LPに比べて扱ひ易く、音が良いといふのが宣伝文句だつたが、実際には、音の良さの方は、長い間、理論的な可能性に留まり、人々が現実に耳にしてゐたのは、LPより遥かに劣る音だつた。問題はCDプレーヤーにある。CDには確かに良い音が入つてゐるのだが、プレーヤーが、それをうまく取り出せない。iTunes で圧縮なしのリッピングをした方が良い音になるのが何よりの証拠だ。PCオーディオの流行も、CDプレーヤーの音質の低さが後押ししてゐると言へるだらう。

 

もともとの仕様で不十分な誤り訂正機能しか持たなかつたのが根本的な問題だが、デジタル信号には劣化は無いといふ過信から、オーディオ機器の他の部分でも、しつかりとした設計がなされなかつたことで、事態は一層悪化した。

 

ともかく、この結果、四半世紀もの間、私達は悪い音を聞かされ続け、忠実度の低い再生装置を前提に作られた音楽に囲まれて暮らすこととなつた。技術の進歩が財・サービスの低下をもたらすといふ皮肉な状況だつたわけだが、この暗黒時代も、ネット配信の普及で終らうとしてゐる。

 

iTunes が有名だが、ベルリンフィルのデジタル・コンサートホールなど、音楽制作者が直接配信する例も出て来た。これらの音楽ソフトは、直接デジタルで配信され、誤り訂正の技術もしつかりしてゐるので、CDと同じ条件の16ビット、44.1kHzのソフトでもCDプレーヤーで聴くよりもずつと良い音がするが、最近では、24ビット、96kHzのソフトも出廻るやうになつた。

 

今のところ、音を出すにはパソコンやオーディオプロセッサが必要だが、これでは嵩張るし、設定が面倒だ。早晩、かうしたソフトも演奏可能なiPodも発売されるだらう。さうすれば、Timedomain のスピーカーにつなぐだけで素晴らしい音楽が楽しめるのだ。その日が待ち遠しい