なでしこ讚

ロンドンオリンピックでのサッカー日本女子チームの活躍については、既に多くが語られてゐるので、今更の感は否めないが、やはり一言言ひたくなつたので、書いておく。

 

サッカー女子の決勝戦は日本時間の8月10日(金)の午前3時45分に始まり5時32分に終はつたので、日本の負けが決まると、朝からの仕事に備へて直に短時間の仮眠に入つたため、試合終了後に何が起こつたのかを知つたのは、その日の夕方以降だつた。その、生で見なかつた部分で、幾つか驚くべきことが起こつてゐた。

 

先づ、キャプテンの宮間選手が、試合終了後泣き崩れて暫く起き上がらずにゐたこと。宮間選手について詳しく知つてゐる訳ではないが、普段から冷静で普通の人間が見てゐないやうな部分まで眼を配つてゐて、昨年のワールドカップ優勝の際にも躍り上がつて喜ぶチームメートと離れて米国選手に言葉を掛けに行くといつた風なので、思ひがけないことで心を動かされた。

 

仲間に引き起こされて立ち上がつた彼女に寄り添つて歩いてゐたのが、大儀見(旧姓永里)選手だつたのも意外な感じがしたが、昨日のNHKの番組を観て納得した。今回のオリンピックで、大儀見選手は、不振だつたワールドカップの時とは打つて変はつて、攻守に大活躍だつたが、そこに宮間選手が一役買つてゐたことも分かつた。

 

それにも増して驚いたのは、表彰式でのなでしこ達の豹変ぶりである。敗戦に沈んでゐたピッチの上、そして控室でも最初は皆、泣いてゐたさうだが、それとは全く別の満面笑みの彼女たちが、汽車ごつこで登場したり、順々に最敬礼したり、といつた振付で観客を沸かせたのだ。少し昔気質の人であれば、眉を顰めたかも知れない程だつた。何より素晴らしいと感じたのは、その笑顔や演出が板についてゐたこと、借り物ではない、心からの笑みであり、心のゆとりであつたことだ。天晴れ、最高の負けつぷりであつた。

 

ワールドカップとオリンピックの二つの決勝戦を比べると、昨年は日本が勝ち、今年は米国が勝つたのだが、日本チームの試合内容は、今回の方が遙かに上だつたと思ふ。米国の攻めを必死で凌ぎながら、セットプレーなどの数少ないチャンスを得点に結びつけたワールドカップも立派だつたが、実力は米国が遙かに優つてゐた。今回の試合は、結果は負けではあつたが、内容はまさに五分五分で、全く対等に渡り合つてゐたと言へる。日本女子サッカーが世界で一家を成すに至つたのだ。それを彼女達も感じてゐたに違ひない。

 

どの選手を見ても、経験を積み、着実に成長してゐる。怪我や病気を乗り越えた選手もゐる。日本の将来も大丈夫かと思はせて呉れる大活躍だつた。なでしこに幸あれ。