日本の哲学

フランスのラジオ放送局 France Culture で日本の哲学に関する放送を流してゐた。「哲学への道」Chemin de la Philosophie といふ番組で、4回の放送は、それぞれ次のやうに題されてゐた。

 

1) サムライの倫理 L'éthique des samouraïs
2) ロラン・バルト「表徴の帝国」 Roland Barthes, l'empire des signes
3) 宮崎 穏やかな世界の裏側 Miyazaki, l'envers du monde paisible
4) 日本の哲学はあるのか Y-a-t-il une philosophie japonaise ?

 

フランス人が日本の哲学といふ場合に何を思ひ出すのか、興味深かつたが、出てきたのがサムライと宮崎駿、そしてロラン・バルトが日本をネタに書いた本といふ具合で、その統一性の無さに呆(あき)れもし、納得もした。

 

サムライの話では、Pierre François Souyri といふ人がゲストで、侍は長い歴史の中で農村に根付いて土地を守る戦士から江戸時代には町に住む官僚へと性格を変へた、とか、『葉隠』は戦士としての役割を失つた武士の懐古主義の産物であり当時から異端視されてゐた、とか興味深い話をしてゐた。

 

「日本の哲学はあるのか」の回では、Clélia Zernik と Michael Lucken といふ二人がゲストで、和辻哲郎の『風土』の話をしたり、柄谷行人氏の米国の大学での講義の録音を流したりしてゐたが、Lucken 氏は中井正一についても時間をかけて話してゐた。この人についてはよく知らなかつたので、ネットで調べてみたり、青空文庫で文章を読んでみたりしたが、母校の先輩であることが分かつた。ちなみに、青空文庫も別の先輩が起こしたサイトなのだ。不肖の後輩は、先輩の功績をフランスの放送で知るのである。

 

Chemin de la Philosophie は Podcast でダウンロードして聴くことができるので、満員電車の暇つぶしには最適だ。語学力の不足と騒音で、何を言つてゐるのか聞き取れない場合もよくあるが。