2024-01-01から1年間の記事一覧

ベルクソンの「怪しさ」

ベルクソン(1859-1941)は立派な哲学者だと思ふのだが、一時期はほぼ過去の哲学者として忘れ去られてゐた。その理由の一つは、彼の考へは生気論だとか、彼は心霊現象を信じてゐるとかいふ見方をされて、「怪しい」人だと思はれたからだらう。そして、かうした…

内村鑑三『代表的日本人』

内村鑑三(1861-1930)の『代表的日本人』は、著者が34歳の1894年に書かれた"Japan and Japanese"の改訂版"Representative Men of Japan"(1908年)の翻訳だ。その序文は、次のやうなものだ。*1 此の小著は、今より十三年前、日清戦争の最中、『日本及び日本人』…

因果性と相補性

山本義隆氏の編訳によるニールス・ボーア(1885-1962)の論文集『因果性と相補性』を読む。 相補性とは 「相補性」はボーアの言葉。原子物理学の領域のやうに、プランク定数が無視できない状況では、「(従来の)因果的記述の枠組みに適合させられない新しい規則…

臨死体験の科学的な研究

臨死体験と呼ばれる現象がある。三途の川が見えたり、横たはる自分の姿を空中から眺めたりといつたオカルト的な体験なのだが、さうした体験をする人がゐることは、事実として認められてゐる。 ネットでも、たとへば次のやうな真面目な研究の結果を見ることが…

科学は心を解き明かすことができるか

「ハードプロブレム」 心を科学的に解き明かさうといふ試みは、現在でも熱心に続けられてゐるが、かうした試みに立ちふさがる「ハードプロブレム」がある。山本貴光、吉川浩満両氏の『心脳問題』では、「なぜ脳内活動の過程に内面的な経験、つまり心がともな…

「米国の敵は米国」

米国の調査会社が発表した2024年の世界の十大リスクの一位は「米国の敵は米国」だつた。今年は大統領選挙の年だが、米国の政治的な分裂がさらに深刻になる恐れがあるといふ。トランプ氏のやうな人物が米国大統領に一度でも選ばれるだけで驚きだが、議会乱入…