IV-1 宇宙の姿

因果性と相補性

山本義隆氏の編訳によるニールス・ボーア(1885-1962)の論文集『因果性と相補性』を読む。 相補性とは 「相補性」はボーアの言葉。原子物理学の領域のやうに、プランク定数が無視できない状況では、「(従来の)因果的記述の枠組みに適合させられない新しい規則…

量子力学と古典力学の境目

量子力学の解釈問題 量子力学は不思議な学問だ。その基本的な形は1920年代に確立されたが、量子力学の意味するところは何かについて、依然として議論が続いてゐる。Internet Encyclopedia of Philosophyといふサイトの記事は、議論の現状を知るために有用だ。…

量子もつれの哲学的な意味

今年のノーベル物理学賞は、量子もつれに関する先駆的な実験を行つた3人の研究者に贈られた。「量子もつれ」とは、二つの物体が離れてゐても、あたかも一つであるかのやうに振る舞ふ現象で、アインシュタイン(1879-1955)は量子力学が予測するこの現象を、「…

宇宙「神々を作るための機械」

ベルクソン(1859-1941)の最後の著作『道徳と宗教のニ源泉』は、次のやうな言葉で締め括られてゐる。 Mais, qu'on opte pour les grands moyens ou pour les petits, une décision s'impose. L'humanité gémit, à demi écrasée sous le poids des progrès qu'…

科学者と哲学者

Jimena Canalesといふ人の書いた”The Physicist & the Philosopher: Einstein, Bergson, and the Debate That Changed Our Understanding of Time”といふ本を読んだ。1920年代にアインシュタイン(1879-1955)とベルクソン(1859-1941)との間に起きた時間をめぐ…

ベルクソンと量子力学

ベルグソン(1859-1941)の哲学と量子力学との関係については、小林秀雄(1902-1983)が『感想』と題されたベルクソン論の中で取り上げてゐる。引用の多い『感想』の中で、これは独創的な部分ではないかといふことを他の場所に書いたことがあるが、調べて見ると…

時間の定義

技術の進歩で時間と私達との関係が変はらうとしてゐる。 情報通信研究機構が公開してゐる標準時間のページJST Clockを開くと、日本標準時(JST)と並んで協定世界時(UTC)*1国際原子時(TAI)*2が表示される。日本標準時と協定世界時は9時間ずれてゐるだけだが、…