I-1 前向きな心

臨死体験の科学的な研究

臨死体験と呼ばれる現象がある。三途の川が見えたり、横たはる自分の姿を空中から眺めたりといつたオカルト的な体験なのだが、さうした体験をする人がゐることは、事実として認められてゐる。 ネットでも、たとへば次のやうな真面目な研究の結果を見ることが…

科学は心を解き明かすことができるか

「ハードプロブレム」 心を科学的に解き明かさうといふ試みは、現在でも熱心に続けられてゐるが、かうした試みに立ちふさがる「ハードプロブレム」がある。山本貴光、吉川浩満両氏の『心脳問題』では、「なぜ脳内活動の過程に内面的な経験、つまり心がともな…

井筒俊彦『意識と本質』

使ふ側から見た思想の体系について考へた際に、中心には私がゐて、その私は心と身体から成るとしたのだが、心とはどのやうなものなのか、その正体を知ることは容易ではない。心については、心理学者や哲学者が様々な説を述べてゐる。その一つとして井筒俊彦…

デカルトとパスカル(I-1 前向きな心)

デカルトとパスカルの一致点 思想の体系化の最初に「前向きな心」といふ区分けを設けたが、全ての中心に私がゐて、その私とは私の心だ、といふものの見方は正しいものなのか。科学者の一部には、心は脳の働きに過ぎず、意識は幻に過ぎない、といつた主張も見…

Into the gray zone

Adrian Owenといふ人が書いた"Into the gray zone" といふ本を読んだ。この本に辿り着いたのは、渡辺正峰氏の『脳の意識 機械の意識』にあつた田嶋達裕(たじまさとひろ)氏についての記述からだ。田嶋氏は前途を嘱望されてゐた若手研究者だが、最近、事故で亡…