2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

MRI で他人の痛みが分かるか

1月9日付の Science 誌(Vol. 323. no. 5911, p. 195)に、fMRI画像が、裁判の証拠として使はれようとした話が載つてゐる。工場の事故で化学的な火傷を負つた人が、その結果、慢性的な痛みを感じるやうになり、補償を要求した事案で、その弁護士が、痛みを感…

張本勲氏と御母堂

讀賣新聞のコラム「時代の証言者」に元野球選手の張本勲氏の話が連載されてゐる。先日の第2回では、4歳の時に右手に負つた火傷の話だつた。有名な逸話のやうだが、感じた所を記す。 話は、かうだ。戦時中の食糧難の時代に、山で掘つた芋を焼いて飢えを凌い…

小泉信三『海軍主計大尉小泉信吉』

小泉信三(1888-1966)の『海軍主計大尉小泉信吉』を読む。戦争で亡くした一人息子を悼んで書かれたもので、当初は、三百部限定の私家版で出されたもののやうである。末尾に、昭和十八年春-同十九年四月二日とあり、戦死の報が届いたのは、昭和十七年十二月四…

プラトンの『国家』

アラン(1868-1951)が、1910年4月4日付のプロポで、プラトンの『国家』について書いてゐる。("Propos I" Biblioteque de Pleiade, p.72-73) プラトンは自己抑制について、素晴らしいことを言ひ、内面の統制は貴族的でなければならないことを示してゐる…

ミリッチ・チャペック『現代物理学の哲学的影響』

Milic Capek(1909-1997) の"The Philisophical Impact of Contemporary Physics"(1961)を読む。大変におもしろい本だ。日本語の翻訳は出てゐないやうだが、日本でももつと知られてよい本だと思ふ。一言で言へば、相対性理論と量子力学によつて、古典力学の基…

貧しさと説教

アラン(1868-1951)が、1909年11月13日付のプロポで、慈善家が極貧の人達に向つてするお説教が大嫌ひだと書いてゐる。貧しい人達は、目の前の出来事で精一杯なのだ。ある種の良い行ひは、既に強ひられてをり、その他の良い行ひは、不可能なのだ。 余…

進化論の年

2009年は、ダーウィン(1809-1882)生誕200周年、『種の起源』出版150周年に当たり、科学雑誌などでも特集が組まれてゐる。進化論といふのは、非常に強力な理論で、その適用範囲も幅広い。例へば、アラン(1868-1951)は、1908年9月1日付のプロ…