2013-01-01から1年間の記事一覧

国の記憶

個人の記憶は自然に残るが、国の記憶は、世代が変はると消えて仕舞ふ。この自然の流れに反して国の記憶を残すためには、意識的な努力を続けることが必要だ。教育が、その基本的な手段となる。 日本の場合、幾つかの理由でこの国の記憶を保つ仕組みが揺らいで…

「慰安婦」問題とは何だったのか

大沼保昭氏の『「慰安婦」問題とは何だったのか』を読む。慰安婦の問題が、また騒がしくなつてゐるので、一度勉強をしようと思つて読んだのだが、痛感したのは、この問題が今も生きてゐて、日々新しい歴史が作られてゐる、といふことだつた。本の題名は「何…

建前と理念

橋下徹大阪市長の従軍慰安婦を巡る発言が話題になつてゐる。ツイッターで橋下氏の発言を読んでゐると、建前と理念との違ひが理解されてゐないことを痛感する。この点を明確にしない限り、日本が世界の一等国になることは無理だらう。また、自国の過去の行ひ…

少数性生物学

「Natureダイジェスト」2013年3月号に、「少数性生物学」の研究を進める大阪大学産業科学研究所教授、永井健治氏の話が載つてゐる。「細胞内の反応は、生化学にのっとっている。分子であればアボガドロ数(10の23乗個)を基準にした濃度で表し、溶液中で…

ベルクソンの「意識平面」説 2

Worms 氏は、ベルクソンが取上げた心理学的な問題の例として、先づ、運動機構に書きこまれた習慣的な記憶と、個別の印象を保存する純粋記憶との違ひを取り上げ、『物質と記憶』から次の部分を引用してゐる。 (PUF版原書85ページ、ちくま文庫版105ページ) …

ベルクソンの「意識平面」説 1

ベルクソンの『物質と記憶』は、身体と精神の関係について、記憶(あるいはその欠如としての失語症)といふ現象を取上げて論じた本で、1896年に初版が出た。彼の主張は、その後の神経科学の発展に照らして、何らかの意味を保つてゐるのだらうか。出版100周年…