2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

H. Feigl のベルクソン観

Herbert Feigl: The "Mental" and the "physical"を読む。(David J. Chalmers ed."Philosophy of Mind, classical and contemporary readings" pp.68-72) 抜粋を読んだだけなので、早まつた判断かも知れないが、内容的には、心と脳の働きは同じものである、…

アランの『神々』

加藤邦宏さんが、ウェブにアランの「神々」を読むを連載してをられる。『神々』Les Dieux は、アランが65歳の時に書かれた本だが、彼の代表作の一つだと言へるだらう。小林秀雄の愛読書の一つでもあつたやうだ。郡司勝義さんが、昭和56年に出版された『…

フジヤマのトビウヲ

讀賣新聞に「時代の証言者」といふコラムが連載されてゐて、今は、水泳の古橋広之進さんのお話が続いてゐる。23日付の分では、古橋さんが「フジヤマのトビウヲ」といふあだ名を付けられた全米選手権について語られてゐた。非常に印象深いお話だつたので、…

将来の予測はどこまで可能か

Mark Buchanan "NEXUS"を読み始めたら、冒頭に、Karl Popper の"The Poverty of Historicism"の話が出てきた。歴史の予測は不可能であるといふことを、次のやうな議論で示してゐるといふ。先づ、原子爆弾の例に見られるやうに、人間の知識の増加は歴史の流れ…

古代ギリシャ人の意識観

ベルクソンの講義録に、次のやうな一節がある。(COURT IV, Cours sur la philosophie grecque, p.78) Les Grecs ont pris une idée, l'ont prise à l'état de pureté, et n'ont plus vu dans la conscience que quelque chose qui en sort par voie de dimin…

桶谷秀昭『昭和精神史 戦後篇』

桶谷秀昭『昭和精神史 戦後篇』(文春文庫)を読む。戦前を描いた『昭和精神史』に続く力作だ。現代における精神の荒廃は日本に限つた現象ではあるまいが、この国の場合には、やはり敗戦が暗い影を落としてゐることが知られる。 昭和24年の『私の人生觀』…

意識が脳の働きである、とは

U.T.Place"Is Consciousness a Brain Process?"を読む。(David J. Chalmers ed."Philosophy of Mind, classical and contemporary readings" pp.55-60) 意識と脳の働きについて我々が別々の表現を用ゐることは、両者が同じものであることを妨げないことを示…

自己複製するロボットは可能か

生物の一つの特徴は、自己複製である。ロボットで、それは可能か。昨年秋の"Science"誌で、ロボット技術の現状が特集されてゐた。"Making Machines That Make Others of Their Kind"といふ記事には、以下のやうな記述が見つかる。(Science 16 Nov. 2007: Vol…

メルロ=ポンティのベルクソン観

小林秀雄は、メルロ=ポンティを読んでゐた。郡司勝義さんが、かう書いてゐる。(「一九六〇年の小林秀雄」文學界2002年9月号263頁) 「『本居宣長』だけに集中して、先づそれが終つてから再び手をつけようと思ふ。しかし、メルロ=ポンティはなかなか…

二元論の問題 其の二

久しぶりに、小林秀雄の講演「現代思想について」のテープを聞き直す。この中で、小林秀雄は、精神的事実と物質的事実といふ二つの経験的な事実があることを強調してゐる。 唯物的な思想の最大の弱点は、我々の一番切実な経験である自由といふ問題を無視する…