哲学ノート

正しいとは(3)

以前、正しさについて考へた時には、次のやうに書いた。 「物事の正しさはどうすれば分かるか。正しいとは、現実に即してゐること、規則に従つてゐることだ。自然科学的な正しさと倫理的な正しさの二つを区別して考へるのが良いだらう。」 しかし、ここでは…

死者の魂

「ある」とは誰かにとつて、何らかの主体にとつてあるといふことだ。この観点から、魂、特に死者の魂はあると言へるかを考へてみる。 先づ、私の魂は、他人から見て「ある」と言へるだらうか。「魂」とは、知覚と連続した記憶を持つもの(或いは持つこと)だと…

その行ひは誰の為か

フランスの放送局 FRANCE Culture が Les Chemins de la philosophie といふ番組を放送してゐて、その内容はPodcastでも聴くことができる。先日、「それが君の運命だ」といふテーマで4日間にわたり放送があり、最後の回は"Les vies du karma"と題してMarc B…

『ゲンロン0 観光客の哲学』を巡つて 4

『ゲンロン0』を読んで勉強になつたことの一つは、政治の本質とは「友敵理論」であるといふ考へがあるといふことだ。それも有名な政治学者カール=シュミットの説だといふ。政治を経済や倫理と峻別するために考へ出されたものだとの事。純粋に政治的な現象…

『ゲンロン0 観光客の哲学』を巡つて 3

これまで述べたやうに、日本人に哲学が身近でないのは、元々が西洋からの輸入物であり、それを受け入れるための文化的な基礎が、明治維新や敗戦の混乱で失はれたからだらう。 他方で、現在の哲学といふ学問のあり方にも、欧米を含めて、大きな問題がある。一…

『ゲンロン0 観光客の哲学』を巡つて 2

『ゲンロン0 観光客の哲学』は、哲学書なのに読み易いといふ評判だ。では、普通の哲学書は何故読み難いのか。 一つには、言葉の問題がある。哲学には「存在」、「本質」、「概念」、「表象」などといつた耳馴れない言葉が出て来る。これは哲学用語の大半が翻…

『ゲンロン0 観光客の哲学』を巡つて 1

東浩紀氏の『ゲンロン0 観光客の哲学』を面白く読んだ。その内容については、何度か読み返した後で言ひたいことがあれば言ふつもりだが、取り敢へず、読みながら考へたことを書いてみる。先づは、今日の日本における哲学の欠落について。 哲学とは何か、いろ…

知覚はどこにあるか 3

1.知覚の投射といふ考へ方の限界について 知覚(今考へてゐる例では視覚)が脳内で生まれる現象だとすると、眼に見えてゐる世界の姿は、脳内から外部に投射されてゐると考へざるを得ない。すると、何故、これ程に形や色彩の変化に富んだ姿が生み出されるの…

知覚はどこにあるか 2

1.知覚には脳以外の身体の状態も重要な役割を果たしてゐる。 知覚において脳が大きな役割を果たしてゐることは確かだが、全てが脳の中にあるといふ考へ方、あるいは言ひ方には、弊害が多い。その一つが、脳以外の身体の役割を見失ふことだ。例へば、頭を回…

知覚はどこにあるか

科学者には、知覚は脳内の現象であり、例へば私の見てゐる茶碗は目の前の卓の上にあるのではなく、私の脳の中にある、と主張する人がゐる。しかし、これは誤りだと思はれる。この誤つた前提から、「脳内の現象から、何故、どうやつて色彩豊かな世界が構築さ…

倫理的な正しさ

倫理的な正しさは、どうすれば分かるか。 前回、「正しいとは、現実に即してゐること、規則に従つてゐることだ。」と書いた。倫理的な正しさの問題は、現実に即してゐるか否かではなく、決められた規則に従つてゐるかどうかである。殺すなかれ、盗むなかれ、…

正しいとは

物事の正しさはどうすれば分かるか。 正しいとは、現実に即してゐること、規則に従つてゐることだ。自然科学的な正しさと倫理的な正しさの二つを区別して考へるのが良いだらう。 先づ、前者について考へよう。例へば、地動説の正しさは、どうすれば分かるか…

「ある」といふこと

「ある」とはどういふことか。 世の中に確かにあるものは何だらうか。例へば、眼の前の石。躓けば痛いし、投げれば窓ガラスが割れる。しかし、石は原子の集合体に過ぎないので、本当にあるのは原子なのではないか。その証拠に、石の形はやがて崩れるが、原子…