2015-01-01から1年間の記事一覧

ピラミッドとギリシャ神殿

アランが1923年3月20日に書いたプロポ。 ピラミッドは死を表してゐる。山のやうなその形から明らかだ。重力の働きに任せると積まれた石はピラミッドの形になる。だからこの形はあらゆる建造物の墓なのだ。恐ろしいことに、建築家は意図的に死に従つて建て、…

幸せになる義務

アランが1923年3月16日に書いたプロポ。 不幸せになること、不機嫌になることは難しくない。人が楽しませて呉れるのを待つ王子のやうに座つてゐれば充分だ。幸せを狙ひ、品物のやうにその重さを計らうとする目付きは、全ての物に退屈の色を投げかける。威厳…

精神の型としての時間

アランが1923年3月12日の日付で書いたプロポ。 人の心の働きは、ちよつとしたものだ。誰でも話せるやうになると考へることを身につける。どの国の言葉にも、数、時、所、場合について同じつながりが現れる。これらは私達が物事を探るための型であり、全ての…

他人の痛み

アランの1923年2月20日のプロポ。 何か小さな事故の後で、医師が諸君の顔の皮膚を縫ふ時、小道具の中には消えさうな勇気を呼び起こすためのラム酒が一瓶ある。ところが、大抵、ラムを一杯飲むのは患者ではなく付き添ひの友人で、自分では気が付かないうちに…

厳しい友と優しい友

アランが1923年2月12日に書いたプロポ。 ジャンセニストは厳しい友で、情け容赦がない。諸君の弱さを見ないで、いつも強いところを打つからだ。これは敬意を表してゐるのだ。まさに諸君が拒否できないことを要求するので、恐ろしい。諸君に自由な人たれと求…

変化する自然と動かぬ理念

アランが1923年2月10日に書いたプロポ。 芸術は動かぬものによつて人間の力を表現する。そこにある心の働きに気付けば、動かぬものほど魂の力を示すものは無い。逆に、揺れ動くものはどれも曖昧だ。走る馬は、勇んでゐるのか怖ぢけてゐるのか、突撃か敗走か…

民主主義と戦争

1923年2月8日にアランが書いたプロポ。その一月ほど前の同年1月11日、ドイツの戦後賠償不払ひを理由に、フランス、ベルギーの部隊がルール地方を占領し、緊張が高まつてゐた。 「出来ることなら彼等を諭(さと)せ、諭せないのなら我慢せよ。」どんな事でも最…

集まつて議論することの価値

人が集まつて議論すれば良い考へが得られると思はれてゐるが、本当か。アランは悲観的な意見を述べてゐる。1923年1月19日に書いたプロポ。 人の集まりは私達に全てを求めて何も返さない。色々な団体が、どれも良い目的のものなのに、間も無く何も目指さず、…

人は頭で考へてゐるか

新年にあたり、アランの1923年1月17日のプロポを載せる。 ホメロスの英雄は頭では考へない。思ひを廻らせるのは何時でも胸と横隔膜の間だ。彼の身体の中では二つの力が働いてゐる。腹は飢ゑ、怖れる。飢ゑには勝てないが、飢ゑの力は予測できる。牛、羊、豚…