2022-01-01から1年間の記事一覧

男の心と女の心

今年のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノ(1940-)が、受賞講演で「私は自分の一族と自分の性の恨みを晴らすために書く」といふ趣旨の発言をしたと聞き、アラン(1868-1951)が1923年9月22日に書いたプロポを思ひ出した。 行ひは思ひに規律を与へるが、そ…

量子もつれの哲学的な意味

今年のノーベル物理学賞は、量子もつれに関する先駆的な実験を行つた3人の研究者に贈られた。「量子もつれ」とは、二つの物体が離れてゐても、あたかも一つであるかのやうに振る舞ふ現象で、アインシュタイン(1879-1955)は量子力学が予測するこの現象を、「…

民主主義についてのチャーチルの言葉

「民主主義は最悪の政治形態である。ただし、過去の他のすべての政治形態を除いては。」といふのは、ウィンストン・チャーチル(1874-1965)の言葉としてよく知られてゐる。しかし、調べて見ると、これは元々チャーチル自身の言葉ではないやうだ。 この言葉が…

議会制民主主義を守る

安倍元首相の暗殺事件を受けて、NHKが「安倍元首相 銃撃事件の衝撃」といふ特別番組を流してゐた。その中で、御厨貴氏が次のやうな発言をしてゐたのが印象的だつた。 先づ、現在の状況をどう見るか。 テロを呼び込むのではないか、といふことまで考へなけれ…

顔を躾ける

アラン(1868-1951)の1922年3月4日付けのプロポ。 誰もの顔に飛んでくる類(たぐひ)の表情がある。話すのを止められないお喋りのやうに、露(あらは)にするのを止めることができない目、鼻、口がある。新聞を買ふ時にも、偉さうな人、脅すやうな人、決然と…

全てを知ることはできるか

人は何でも知りたいと思ふ。自分が生きてゐる「今、ここ」を超えて、その外側の世界を知らうとする。答へが得られるか否かに関はらず、自分が生まれ落ちたのはどのやうな世界なのかを考へずにはゐられない。世界の果てはどうなつてゐるのか、死んだらどうな…

宇宙「神々を作るための機械」

ベルクソン(1859-1941)の最後の著作『道徳と宗教のニ源泉』は、次のやうな言葉で締め括られてゐる。 Mais, qu'on opte pour les grands moyens ou pour les petits, une décision s'impose. L'humanité gémit, à demi écrasée sous le poids des progrès qu'…

人類の進歩

1921年7月4日のアラン(1868-1951)のプロポ。 つづら折りに上つてゆく道。進歩の美しい絵姿で、ルナンが示したのをロマン・ロランが受け継いだ。しかし私には良いものだとは思はれない。知性が、考へ込み過ぎて、多くの事柄で、待つことを旨とした時代のもの…