「新・東京裁判」

十月号の文藝春秋に、「新・東京裁判、国家を破滅に導いたのは誰だ」といふ座談会が載つてゐる。この雑誌は、最近、太平洋戦争に関する座談会を何回か掲載してゐるが、今回のは、それらの集大成といふ観がある。多様な視点からの検討が行はれてをり、内容も非常に濃い。

東京裁判については、勝者による一方的な裁判である、とか、平和に対する罪といふ新しい罪を作り遡及適用してゐる、とか、様々な批判があり、これはこれで一理あるのだが、負け惜しみに過ぎないといふ気もする。むしろ、他国にどう言はれようと、日本人として、当時の政策をどのやうに評価するのかこそが重要な問題なのだ。

昭和天皇のご存命中は、なかなかかうした議論が難しかつた面があるにしても、「一億総懺悔」のやうな形で、結局、当時の政治責任が曖昧になつて仕舞つたのは、戦後の日本の民主主義の健全な発展を妨げたと思ふ。国際関係についての、日本人の常識も、発育不全となつた。その意味で、最近の文藝春秋の試みは、高く評価すべきだ。