臨死体験の研究

英国の Southampton 大学が中心となつて、臨死体験の研究が始まる。心停止中の患者の脳や意識の状態を調べるほか、体外離脱の真偽を確かめるために、天井近くの特別の位置からだけ見える場所に様々な絵を出して、蘇生した患者がそれを見たかどうかを調べるのださうだ。

 

The AWARE Study と呼ばれるこの研究計画は、9月11日に開催された国連のシンポジウム"Beyond the Mind-Body Problem: New Paradigms in the Science of Consciousness"で紹介された。シンポジウムの様子は、ウェブサイトで見ることができる。http://www.mindbodysymposium.com/

 

臨死体験については、様々な話があり、多くの本が書かれてきたが、今回の実験は、欧米の25の医療機関が参加して行はれるといふ大掛かりなもので、かうした実験が行はれること自体が、欧米における心と身体の問題についての意識が変はりつつあることを示してゐると言へるだらう。

 

勿論、シンポジウムで、実験の関係者が述べてゐるやうに、「新しいパラダイム」と言つてはみても、具体的な理論的枠組みがあるわけではなく、まづ、事実を確かめるといふ、言はば手探りの段階なのだ。学界の中でも、極一部の人達が関心を示してゐるに過ぎない。どこまで新しい事実が確かめられるかは、やつてみないと分からない。

 

しかし、心と身体の関係に関心を持つ者にとつては、非常に興味深い研究だ。パネルディスカッションで、臨死体験者が、自らの経験が現実よりもより現実的(real)だつたと述べたことから、現実的とはどういふことかといふ問題が提起されたやうに、我々が物事を見聞きし、考へるために用ゐてゐる基本的な枠組みを問ひなおすといふ、哲学的な意義も大きい。その結果が注目される。