最強の組合せ

由井啓之さん @Yoshii9 がご推薦の Mac Book AirBitPerfectDevilsound DAC の組合せから出る音を、自作改造のタイムドメイン MINI 卵形で聴く。素晴らしいの一言。高級 CD プレーヤーを上回ると言はれる iPod からの音と比べても、音像の大きさ、低音の豊かさ、細かな音の聞こえ具合などが格段に向上する。例へば、バックコーラスの言葉がはつきりと聞き取れるやうになり、それまで気付かなかつた漂ふやうな装飾のフレーズが聞こえて来る。

 

かうした変化を体験すると、いろいろと考へさせられることがある。

 

タイムドメイン MINI の潜在能力>
先づ、MINI の潜在能力の高さ。音源によつてどこまでも良い音を出すのには驚くしかない。普通の MINI では、高音の伸びが足らず、低音が膨らんだ感じが残るが、然るべき改造でさうした問題はほぼ解消する。自分で改造するのが面倒な方には、少し値が張るが T-LOOP さんの E-type がお勧め。

 

これはタイムドメインのアンプ+スピーカーが極めて素直だと言ひ換へても良い。かうしたスピーカーの良し悪しを議論する場合には、良い音源を用意しなければ意味が無い。タイムドメインのスピーカーを使つてみて納得できなかつた方々には、もう一度、音源を見直すことをお勧めしたい。

 

<素直なスピーカーと「良い音」のスピーカー>
もつとも、素直なスピーカーと良いスピーカーは違ふといふ議論もあり得るだらう。どんな音源でも、そこそこ楽しめる音を出すといふスピーカーもあり得るし、一般的な評判が高いスピーカーは、この種のものが多いやうだ。しかし、かうしたスピーカーは、本当に良い音源の良さを殺してしまふといふ問題も抱へてゐる。低音の音階が聞き取り難くなり、音像が不明瞭になる。そもそも、スピーカーは音を伝へる装置であるはずで、装置が音に色付けするといふのは邪道だと言ふべきだらう。

 

<CD 以降の技術開発の迷走>
iPod から上記の方法に変更した場合でも、音が格段に良くなる CD とさうでもない CD とに分かれる。一般的に、古い録音の方が自然な広がりがあり、気持ちよく聴けるといふ傾向がある。手持ちの CD では、ポピュラーだとカーペンターズ、クラシックだとワルター指揮のモーツァルト交響曲などがさうだ。

 

これは、CD の普及以降、音を良くするための技術開発が道を誤つたことを示してゐる。その原因の一つは素直なアンプやスピーカーが少なかつたことなのではないだらうか。CD から期待した音が出ないので、周波数特性を良くする、正弦波の形を整へるといつた表面的な評価基準に基づいて、サンプリングを増やす、イコライザーで調整するなどの対策を取つて来たが、出口であるスピーカーで色付けがなされてゐると、どの対策が良いのか悪いのかが分からない。結果的に音を悪くしてゐることにも気付かなかつた、さういふことなのではないかと想像される。

 

音楽を制作する側でも、さうした「技術開発」の成果を組み込んだ再生装置を前提にするので、本当に良い音のソフトが少なくなつたのではないだらうか。タイムドメインのやうな素直なスピーカーやアンプが普及すれば、演奏技術や録音技術の良し悪しが普通の聴き手にもはつきりと分かるやうになり、これらの技術を高めるのにも役立つに違ひない。

 

リッピングは適当で良い?>
また、良い音を出すには、デジタル情報そのものよりもデジタルからアナログへの変換と、アナログになつてからの部分が重要だといふことも感じた。以前は、CD の音の悪さは読み込みの際のエラーに起因するものだと考へてゐたが、デジタル部分での差は小さく、ある程度以上の CD プレーヤーであれば読み落としは殆ど無いといふ話もある。実際に、何の工夫もない Windows PC で iTunes を使つてリッピングした音源でも、上記の組合せで聴けば、良い音がする。MaciTunesXLD によるリッピングの結果を比較してみたが、私の耳では差が分からなかつた。リッピングによつて音に差が出るのは、アナログ化の部分が理想的ではないので、わづかな違ひが音質に大きな影響を与へるのではないかといふ気がする。

 

また、これは、今更ではあるが、Mac は PC に比べて音が綺麗=雑音が少ないといふことも実感できた。普通に使つてゐるハードディスク内蔵 PC と、音楽専用にした Mac Book Air を比べてゐるので、公平な比較とは言へないだらうが。

 

由井さんのご推薦なので、経験の乏しい者が改めて言ふまでもないのだが、Mac Book Air、BitPerfect、Devilsound DACは最強の組合せだ。少し値段は高くなるが、良い音を求める人は、是非お試しあれ。