タイムドメイン ウーファー zeppo

久しぶりに音楽再生のタイムドメインの話題。

Kappa Infinito*1さんが開発されたタイムドメイン ウーファーzeppoを試聴して来た。雑司ヶ谷試聴室。zeppoといふのはイタリア語で「満ち溢れる」といふ意味だとのこと。

インパルス特性を重視して波形の忠実な再生を目指すタイムドメインの考へ方*2で設計されたスピーカーでは、小口径のスピーカー1個で全ての周波数の音を出すフルレンジ型のものが多いのだが、周波数帯の両端、特に低音ではやや不満が残ることは否めない。これを補ふために、DENSO TEN社のECLIPSEなどでウーファーが売り出されてゐる。その他にも世の中にウーファーはたくさんあるのだが、タイムドメインの設計思想で作られたものでないと、音がぼやけて、むしろ無い方がましといふ結果になつて仕舞ふのだ。

Kappa Infinitoさんのウーファーは、箱型のECLIPSEのものとは違ひ、Yoshii9のやうな円筒形で、8cmのユニットを使つてゐる。円筒形で余分な音が更に小さくなり、似たやうな要素が使はれてゐることから、Yoshii9などのメインのスピーカーとの相性も良いと予想される。電気的なローパスフィルターは使はず、物理的な音の出口を小さくすることで高音域を絞る仕組みを採用して、位相のズレを防いでゐる。

さて、実際の音は如何。聴いてみると、本当に自然な音がする。低音が強化されるのは勿論だが、中高音もカドが取れ、さらに本物の楽器の音に近づくと感じる。音の繋がりも全く違和感なし。

Yoshii9は素晴らしいスピーカーなのだが、音源によつては、低音楽器の場合などに、言つてみれば本来は丸い形の音が、どこか欠けてゐて、半月や三日月のやうに聞こえる気がすることがある。マニアの性かも知れないが、一度それが気になり出すと、音楽を楽しめなくなる。zeppoを付けて聴くと、さうしたストレスが全く無くなり、音楽に集中してゐる自分がゐる。

zeppoを加へたシステムから出て来るのは、地響きするやうな低音でも、(ウーファーだから当たり前だけど)煌めく高音でもない。ただただ自然な楽器の音、人の歌声だ。購入者から「ウーファーを入れると、ティンパニーの音が自分で演奏したときに聴こえる音になりました。」といつた反応が出てゐるのも納得。楽器を演奏する人の購入が多いらしい。

正確で立体的な音像を重視する関根さんが作られたウーファーだけあつて、映画であれば、いかにも自然なヘリコプターの羽の音や街の騒音が、画面の然るべき位置から聞こえて来る。ウーファーとしては小型で場所も取らない。タイムドメインのスピーカーの愛用者には、強くお勧めする。さうでない人も、zeppoを組み込んだタイムドメインの音を、是非、一度聴いてみて欲しい。忠実な再生音に驚かれると思ふ。

*1:正式には、クニテック株式会社のKappa Infinito事業部。

*2:由井(よしい)啓之氏が提唱した理論。タイムドメイン社のサイトで、技術的な情報をみることができる。