健康な精神は健康な肉体に

Economist 誌に、病気と知能との関係についての記事が出てゐる(July 3rd 2010, pp.71-72)。ニューメキシコ大学の研究者 Christopher Eppig 等が Proceedings of the Royal Society に発表した論文によれば、世界の国々の感染症の被害と知能指数とを比較すると、両者の間にははつきりとした逆相関があるといふのである。

 

脳は多くのエネルギーを必要とする器官で、新生児では代謝エネルギーの87%、5歳児で44%を消費し、成人でも、体重の2%に過ぎぬのに全体の4分の1のエネルギーを使ふ。このエネルギー消費と競合するものは、脳の発達を妨げる。寄生虫や病原体は、宿主の器官を食ふ、その機能を自分の増殖に使ふ、栄養分の吸収を妨げる等により、さうした悪影響を持つといふのだ。

 

世界保健機関が192カ国について調べた28種の伝染病により短くなつた寿命のデータ DALYS (disability-adjusted life years)と、英国の心理学者 Richard Lynn 等が分析した113カ国の知能指数との間には、約67%の逆相関があるといふ。相関は必ずしも因果関係を意味しないが、教育、農業労働の比重、気候などの他の要因は、伝染病に比べると影響が小さいといふ分析結果が出てゐるのださうだ。

 

マラリアも脳に影響を与へることが知られてゐるが、子供にとつて最も大きな脅威は、下痢を引き起こす様々な病原体らしい。子供の死亡原因の6分の1は下痢であり、脳の発達に必要な影響の吸収を妨げるものでもあると言ふ。

 

この分析が正しければ、伝染病の予防が知能の向上につながり、貧困で悩んでゐる国々の発展につながると期待される、と記事は結んでゐる。